高校生から大人まで楽しめる文化へ

二宮音楽事務所代表・FAN実行委員長 二宮孝インタビュー

 

 1984年の早稲田大学アカペラサークル「Street Corner Symphony」結成、1999年のJapan A cappella Movement(JAM)発足、そして2001年のハモネプ放送開始――。日本のアカペラ文化における「重要な出来事」として知られるこれらに共通するのは、すべて大学生が中心を担ってきたという事実だ。そして2021年現在もなお「日本のアカペラといえば大学生」という構図が定着している。

 

 そんな中、高校生によるアカペラが根付き、受け継がれている地域がある。愛知県だ。

 

 この動画は昨年5月、コロナ禍の中で生まれた。愛知県の3校と三重県の1校の生徒が出演し、思いのこもった演奏をしている。この『学園天国』は、長年、愛知の高校生らが歌い継いでいるレパートリーだという。

 

 

 「高校生のうちからアカペラに親しみ、大学生で表現の幅を広げ、そして社会人でもずっと楽しんでいけるように」。そう話すのは、この動画の仕掛け人である、二宮音楽事務所(名古屋市)代表の二宮孝である。

 

 二宮は本業であるクラシックおよびアカペラ公演の企画やマネージメント業務の傍ら、2010年以来、愛知県の高校生に向けて、ボランティアのアカペラ指導を継続している。さらに愛知を代表するアカペライベント「FAN」(ファン、名古屋アカペラフェスティヴァル)の実行委員長、社会人アカペラサークルA-radioの代表という顔を持つ。愛知県のアカペラ文化を「大学生ではない角度」から支える人物だ。今回はそんな二宮に、質問をぶつけてきた。

 

 アカペラにかんする言説は、ともすれば大学生中心になりがちだ。その隘路から脱却し、より広い視野で文化を俯瞰・研究するにあたり、今回のインタビューはきわめて重要な機会になったと考える。

 

インタビュー:2021年4月