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ボイパはモテる。それも圧倒的に。

 ボイパはモテるのか。これまで幾度、繰り返されてきたかわからないこの議論に終止符を打つのが、この論考の目的である。

 結論から言おう。ボイパはモテる。それも圧倒的に。「モテない」という読者がいるとすれば、それは使い所と使いかたがよろしくないのである。この文章には「ボイパで圧倒的にモテる」方法が書かれている。読むことで、あなたのバラ色の未来が約束される。

 

まず相手に興味を持ってもらうことから

 

 まず、あなたが「ボイパを披露すれば、途端に恋人ができる」と思っているとすれば、今すぐに考えを改めなければならない。あなたの恋愛対象は、あなたが思っているほど単純ではない。人間の複雑さというものに、敬意を払うことから学び直す必要がある。

 

 われわれボイパ奏者はまず、恋人をつくるよりもっと以前の「相手に興味を持ってもらうこと」を目指すべきだろう。そして「また会いたい」「恋人」…といった調子で、順を追って進めていくしかないのである。なにはともあれ「相手に興味を持ってもらうこと」は、モテる状態への最短にして最大の一歩といえる。多くの人々は、ここを突破できずに脱落していくからだ。

 

 具体的なアクションプランを紹介する前に、一つだけ覚えておいてほしいことがある。

 「モテる」はその定義上、多数からベクトルが向けられている状況でなければならない。私たちが目指すべきは、異性はもちろん、同性からも、さまざまな年齢層からも興味を持ってもらう状態である。そうして広がった交友関係の中から、生涯の伴侶や無二の親友、信頼できる仲間が生まれていくものなのだ。もしあなたが「特定の年齢層の美しい異性からモテたい」というのであれば、ボイパを選んだ時点でセンスがないという事実を自覚することから始めるべきであろう。ボイパはあくまで関心を引きつける「きっかけ」でしかない。

 

「すごいわざ」はいらない

 

 たとえば、あなたはこういうボイパの使い方をしていないだろうか。

 

 「ぼくボイパできるんだよね、ブォォーンピルピルキュルキュルビシュシュー」(なんかすごいわざを見せびらかす

 

 これで相手は、二度とボイパを聴こうとしてくれることはないだろう。なぜか。それはあなたが、相手の想像力を大きく超えた情報を与えてしまっているからである。

 コミュニケーションの基本は「適切な情報量」だ。あなたの周りには、パワーポイントに文字をぎっしりと詰め込んでプレゼンテーションをしてしまい、商売が破談させてしまう人はいないだろうか。あるいは、延々と趣味を語り続けて相手を呆然とさせているオタクはいないだろうか。いずれも、相手の許容範囲を超えた情報量を与えているがゆえの、コミュニケーション不全である。

 

 そう、これらはすべて私の経験だ。かつて私は圧倒的な文字量のパワポで商談相手を呆れさせた過去がある。「涼宮ハルヒの憂鬱」のメタ性を早口で語り続けて意中の女性を困惑させた思い出がある。そして覚えたての「ブォォーンピルピルキュルキュルビシュシュー」というボイパを数十秒も披露して、周囲を置いてきぼりにしてしまった記憶がある。

 

 「ブォォーンピルピルキュルキュルビシュシュー」は、「ボイパを聴きたい」という相手にのみ、使ってよいワザなのだ。しかし「ぼくボイパできるんだよね」から、唐突に多くの情報量を数十秒も押し付けるのは、コミュニケーションとは言えない。シンプルかつ短時間で披露し、相手に「もっと聴きたい」と思ってもらうことが大事なのだ。

 

合コンで「勝つ」ボイパ

合コンで有声音ボイパを披露しよう(コロナ明けにね)
合コンで有声音ボイパを披露しよう(コロナ明けにね)

 ずばり言おう。あなたが披露すべきは「有声音ボイパ」である。これしかない。

 

 「有声音ボイパ」という言葉に聞き馴染みのない読者のために少し補足しよう。ボイスパーカッションは人によってその方法は多種多様だが、大まかに「有声音」「無声音」に分けられる傾向がある。文字通り、声成分を混ぜて鳴らす方法が「有声音」、声成分を混ぜずに摩擦音や破裂音のみで鳴らす方法が「無声音」だ。(ただし最近は両方をうまく使い分けるプレイヤーも多いことから、この二分法自体がナンセンスだとみられる向きもある)

 

 さて、なぜ「有声音ボイパ」を披露すべきなのか。それは音量に関係している。有声音ボイパは、声成分を混ぜられるため、マイクなどの拡声機器がなくても比較的大きな音量を出せることが特徴である。大きな音量は、思いのほか使い勝手がよい。

 あなたがボイパを披露する場面は、必ずしもマイクを持っているとは限らない。周囲が静かな環境であるとも限らない。たとえば、ガヤガヤした居酒屋の合コンで、無声音ボイパを披露したとしよう。予想される反応はたった一つである。

 

 「え?wあんまり聴こえないんだけどw」

 

 ここで大きな音量が出せる有声音ボイパを披露したらどうだろうか。聴き手はその迫力に圧倒され、このように言うはずだ。

 

 「えー!すごーい!どんなふうに出しているの?」

 

 この言葉を引き出すことができれば、もはや勝ち戦である。

 ちなみに有声音ボイパはその音量の大きさもさることながら、出力過程がやや複雑であるがゆえに「人の口で鳴らしているとは思えない」という印象も抱かせることが可能だ。一方で無声音ボイパは無声両唇破裂音[ぱぴぷぺぽ]や無声軟口蓋破裂音[かきくけこ]の延長線上に位置づけられるため、人の口で鳴らしているという想像は比較的容易である。(注:合コンでこのような解説は確実に引かれるのでしてはならない)

 

 ちなみに演奏するフレーズとしてはハーフシャッフルを推奨したい。理由は、相手の気分を高揚させることと関係している。音量があり重々しい有声音ボイパを4つ打ちなどで鳴らしてしまっては、相手に威圧感を与えてしまう危険性すらある。相手が音楽に馴染みのある人であれば「この人リズムもいけるじゃん」と思わせることもできるかもしれない。

 

 以下リンクは筆者録音の有声音ボイパ一例である。演奏の長さはこれだけで十分である。

 

『有声音宣言』

 

 ここで調子にのって「もっとたくさんワザがあるよ。ブォォーンピルピルキュルキュルビシュシュー」となってはいけない。他にもたくさんわざが出せることを「匂わす」だけでよいのだ。そして「もっと聴きたい」という人に対しては、「YouTubeにアップした演奏動画を送るよ」などと言ってLINEを交換したり、「ステージならもっとボイパの魅力を伝えられるんだけど…」などとライブに誘ったりすればよいのである。きわめて簡単である。

 

 ただし、「マンツーマンで教えてあげるよ」などと言って自宅に誘うようなことだけは絶対にしてはならない。そもそもボイパは一晩教えたくらいで身につけられるものではない。自主的に練習するようになるくらい興味を持ってもらうことしか上達の道はないのである。ボイパをダシにして自宅に誘うようなやつは最初からボイパを教えるつもりなどなく「腹式呼吸が大事だから」などと行ってボディタッチをするに決まっている。外道である。

 

 なにはともあれ、大切なのは、繰り返すが「興味を持ってもらうこと」である。ボイパを披露したのに興味を示さないような者は最初から相手にする必要はない。読者諸賢もよく知っている通り、多くの人は興味を示してくれるものだ。ボイパにはその力がある。

 「ボイパはモテない」という人は、ボイパのすばらしい魅力を忘れているだけではないだろうか。自分自身がなぜ夢中になったのかを今一度思い出し、その魅力が誰にでもわかるようシンプルに伝えることに力を注げば、おのずとあなた自身もモテていくはずだ。

 

 そして、その効果をさらに高めるために、いまこそ有声音ボイパを覚えよう。有声音はあなたをかならずやモテモテにし、人生を大きくかえるきっかけを与えてくれる。そこから生まれたムーブメントは、世界を変える力すらをも持ちうるのだ。万国の有声音ボイパよ、団結せよ!