· 

#ティーンズリップクイーン は「ボイパ」の可能性を拡張する

 ガールズグループ「テーマパークガール(※1)の新曲「#ティーンズリップクイーン」が6月15日、配信スタートした。ポップな楽曲に乗せられる、10代のメンバーによるはつらつとした歌声。まるでコロナ禍の日本を応援してくれるかのような、明るく元気なナンバーだ。

 

 この楽曲において最も注目すべきは、その誕生経緯である。この自粛期間中にメンバー同士がTik Tok上で行ったとある「遊び」が元になっているという。下記は、4月17日から20日にかけて「いぐさ」「かなみ」「ももか」「えみい」「けりぃ」の各メンバーが投稿した動画である。

 

@tpg.igusa

TPGで音遊びをします~👏🏻👏🏻トップバッターはいぐさ!!次は@tpg.kanami ちゃんにバトンを渡します!❤︎よろしく~︎︎︎︎︎☺︎ #アカペラ##ボイパ#春の歌うま#MOS##お家時間##音遊び#音バトン#stayhome#withme

♬ オリジナル楽曲 - いぐさ🌷🌸
@tpg.kanami

いぐ吉TPG@tpg.igusa 音遊びバトンありがとううううっ🌈低め入れてみたよ〜!!!じゃあ次は@tpg.momoka に回しちゃお。いぐももかな完成だあ🌼 ##アカペラ ##ボイパ ##春の歌う ##MOS ##お家時間 ##音遊び ##音バトン ##stayhome ##withme

♬ オリジナル楽曲 - かなみ🥑🍏
@tpg.momoka

tpgで音遊びをしてるんですけど、いぐさ@tpg.igusa から始まってかなみ@tpg.kanami ちゃんからバトンが回ってきました!難しかったあ💦笑次はえみい@tpg.emii よろしく!##アカペラ##ボイパ##春の歌うま##MOS##お家時間##音遊び##音バトン##stayhome##withme

♬ オリジナル楽曲 - 宇田川ももか🍑🌸
@tpg.emii

TPG音遊び☺︎@tpg.momoka から回ってきました〜🧚‍♀️いぇいぇいしたよ😂最後は@tpg.kelly ☞ ##アカペラ ##ボイパ##の歌うま #M#OS#お#時間 #音#び #音#トン#sta#yhome #wit#hme 再投稿です。ごめんなさい🙇🏻‍♀️

♬ オリジナル楽曲 - えみい
@tpg.kelly

てぱが音遊び @いぐさ🌷🌸@かなみ🥑🍏 @宇田川ももか🍑🌸 @えみい からまわってきて、けりぃで完成ですう🥳これ、むずいって😂 ##アカペラ ##ボイパ ##mos ##音遊び ##春の歌うま ##おうち時間 ##stayhome ##withme ##音バトン

♬ オリジナル楽曲 - けりぃ🐯🍒

 

 短いフレーズの歌をループさせて重ねていくアカペラ演奏である。彼女らの演奏をもとに、管楽器グループ「MOS」とピアニスト「Yancy」が楽器アレンジを加えたのが今回の新曲だ。

 

 さて私が着目したいのは、「テーマパークガール」のメンバーが、このSNS上の演奏を「ボイパ」という名称で表現している点である(※2)

 

 われわれボイパプレイヤーがボイパを認識するときの条件は、いくつかある。そのうちもっとも重要な条件とはおそらく「打楽器の直接的模倣音であること」だろう。ひらたく言えば声っぽく「ない」ことだ。

 一方でてーまpテーマパークガールの演奏は声っ「ぽさ」が前面に出ている。彼女らはそれを「ボイパ」と表現した。つまり、世代によって明確な認識の違いが存在するのだ。

 もしくはこう考えることもできる。

 ボイパにたいする認識は、以前よりあきらかに拡張している。これはいったい、何を意味しているのだろうか。 

 

ボイパの敷居は下がり続けている?

 「認識の拡張」は、物事が一般化するために、なくてはならないプロセスである。たとえばロックの歩みを見れば明らかだろう。

 ビートルズも、グラム・ロックも、プログレも、パンクも、ヘビメタも、グランジも、まったく異なる音色や構成だ。しかしこれらは、ひとまとまりに「ロック」として認識される。よくよく考えれば明らかに強引だが、他方で、ひとまとまりに認識されているからこそ、多くのファンを獲得してきたとも言える。

 

 そしてこの現象はボイパにおいても急速に広まっている。これまでまったく別ジャンルとして認識されてきたヒューマンビートボックスが「ボイパ」と呼ばれ、ボイパよりはるか以前から存在してきたはずの口三味線が「ボイパ」と認識されている。今回、テーマパークガールによる一連の活動はもまた「ボイパ」と表現された。

 

 ボイパはかつて、限られた人にしか使えない特殊技能だった。しかし2000年代以降、ハモネプの放送とYouTubeの誕生によってプレイヤーは激増。そして現在、SNS(TikTok)によって、ボイパの敷居はさらにもう一段階下がった。口から発するリズムを繰り返しながら他人と重ねることで、音楽を楽しむことができる。ボイパはSNSによって、コミュニケーションツールとしての新たな価値を獲得しようとしているのだ。そこでは「声っぽいか否か」といったものさしは意味をなさない。

 

 さて#ティーンズリップクイーン」はこれまで述べたとおり、Tik Tok上のボイパ遊びがきっかけとなり、楽器演奏を経てひとつの楽曲となった。さらに「リップアート」や、オンラインを介したいわゆる「三密」回避の制作過程といった付加価値をつけながら完成にこぎつけた。SNS時代には珍しい、きわめてストーリー性のある曲でもある。

 

 この曲は、ボイパの可能性の拡張という意味でも、アフターコロナにおけるSNSのありかたという意味でも、深く考えさせてくれるたいへん革新的な一曲だ。必聴である。

 

 

配信はこちらから

 

https://themeparkgirl.lnk.to/tlqPu

※1…テーマパークガール・・・SNS発、Z世代インフルエンサーガールズグループ。「毎日がテーマパーク!」をコンセプトにZ世代ならではの自己発信スキルを持ち合わせた、いぐさ、えみい、かなみ、けりぃ、ももかの仲良し5人組からなる、女子小中高生に大人気なYouTuberアーティスト。(公式サイトより)

※2…参考インタビュー

テーマパークガール、Tik Tokの音遊びから生まれた『#ティーンズリップクイーン』を語る